スザクは、シュナイゼルが持ってきて庭に植えさせたピンクの花びらを呆然と見上げていた。

日本のものとは違う。

でも、【同じ】だ。

シュナイゼルの気遣いが嬉しくて、桜の木の根元に座って本を開いた。

昔、他国に贈られた桜のように、この桜も異国に来た。

何を思っているのだろう。

この場所を、嫌だとは思っていないだろうか。

ここの土に合うだろうか。

そんなことをグルグルと考えていたスザクは、後ろから来た影に気づかなかった。

気づいたのは、ひょいと抱え上げられたとき。

「どうした？気に入らなかったか」

「殿下！」

仕事時に来ている正装のまま、シュナイゼルは来ていた。

仕事の合間に抜けてきてくれたらしい。

「あちらからわざわざ取り寄せたものではなくてな。知り合いの屋敷にあったものを一本譲ってもらったのだ」

「そうだったんですか？」

なら、土があわないという心配はないだろうか。

そう思えて安心してシュナイゼルに抱きつくと、シュナイゼルは困惑したように目を開いた。

「どうした？具合でも悪いか」

「いいえ。違います」

風が一際強く吹いて、桜の花びらが視界を埋めた。

その瞬間、スザクの耳にだけ、特別な声が届く。

その声に、スザクは益々笑顔になり、わけが分からないと眉を寄せているシュナイゼルに顔を向けた。

「殿下、今度暇があったら、お花見しましょう」

「お花見？」

「はい！この桜の下で、お弁当食べたりとか、お酒飲んだりするんです」

夜桜も綺麗ですよ。

そう言うと、シュナイゼルは少し考えた後、スザクの頭をなでて頷いた。


【私は、貴方のお傍で咲き誇れて幸せですよ】


桜の特別な声は、スザクの耳にだけ届いて残る。

明日には、ロイドも一緒に桜の下で小さな宴でも開こう。

風が吹いて何故かその度に笑うスザクを見ながら、シュナイゼルは頭の中でスケジュールの調整と友人を巻き込む算段を考えていた。









長くなってしまいました・・・お花見、良いなぁ、行きたいですね。

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