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――――――――――その日、その大国の権力者の一人たる青年は、とても上機嫌だった。





「朱仁?」
「はい、なんですか?天子」

可愛い婚約者に呼ばれて振り返る。ちなみに、青年の隣には傍目にはわからないが上機嫌な親友がいる。

「星刻も…なんだか、上機嫌、ですね?何かありましたか?」
「おや、上機嫌だなんて…それでは私がいつも不機嫌な仏頂面だと誤解されてしまいますよ」

(((((昨日まで不機嫌だったじゃないですか…!!)))))

大多数のそんな声も、真鍮で発せられたばかりに聞こえはしない。

「実は、ブリタニアとの交渉がうまくいきまして。何も起こらなければ、残りの一月をゆっくりと過ごせそうなのですよ」
「あぁ、星刻!まだ言わないようにと約束したじゃないか…決まったわけじゃないんだから」
「意地でもそうする人間の前では無意味なものだ」
「…では、年末年始はいつもよりゆっくりとできるのですか?」

天子の問いに、二人はそれはもう上機嫌にこたえる。

「もちろん。宮中での決め事やら式典などもありますが」
「押し付ける人材がいるのですから、そういう決めごとに詳しく、なおかつ煩い人たちがね。さぁ、そうと決まったからには年末の平穏のためにも馬車馬のごとく働かさせなければいけませんね。天子、夕餉の席までには終わらせます」
「(…今、…いや、いいか)…それでは天子様」
「お仕事、頑張って下さいね」

それに笑顔で頷いたのを確認して去って行った天子は、知らない。





――――――――――『頑張って仕事をする』のは、彼らに見事に仕事を振りわけられて死に物狂いで書類を捌く、部下たちであることを。







思いつきです。冒頭付近の周囲の文官達の叫びが書きたくて書いてみました。
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