新しいのは御門シリーズですね。ペルソナ三人がエリア11に行ってる間のブリタニア本国のお話。
最初は、書こう書こうと思っていた兵士さん達にしました。
呟きとともにゲンドウが消えると、その場に再び起動音が響く。
すると、一人の国連軍の礼服をきっちりとまとった女性がどこからともなく現れた。
「……聞いての通りだ。ネルフの運営体制に対しての監査を」
「…突然事務総長に呼び出され、委員会直々とは驚きましたが…光栄です。内部監査は不要でしょうか」
ゲンドウの周りから消えたはずの光が、一人の女性の周りに集まる。
「部下に詳細は任せてある。後で受け取れ。次の使徒戦まで、そしてその使徒戦におけるネルフの監査だ」
「了解しました。…あぁ、ネルフ本部司令及び副司令個人に対しての監査はいかがなさいますか」
「…」
考え込むような沈黙が12のすべての光から窺えて、不謹慎とは思いつつも、女性は微苦笑を浮かべた。
「お望みならば埃がなくなるまで、お調べして参りますが?」
完全に遊んでいるような声音に、流石のモノリス達も黙り込む。
「……不当な使い込みがあったら報告を、それだけで構わん」
やがて呟かれた1と書かれたそれからの言葉に、女性は海軍式の敬礼で返した。
「了解致しました!」
*****
12の光から呼び出された女性は、国連本部の廊下を悠然と歩いていた。
誰もがその姿に敬礼をし、または手を挙げることであいさつを交わす。
女性もその一人一人に軽く微笑んで礼をしたり敬礼をしたりしながら、一つの扉に入って行った。
室内に入ってすぐに目に入ったのは、一人の青年と少年。
少年は軽く敬礼をし、青年はフッ、と笑ってコーヒーを軽く掲げる。
他の室内にいた面々も、女性の姿を認めて軽く敬礼をした。
「や、おかえり。老人会からは何か言われたかい?」
「とりあえず、ネルフの監査」
「……まぁ流石に、頑張って完全稼働まであと30%だった兵装ビルを尽く壊されたら、委員会も国連上層部も怒りますね」
第三新東京市に配備された最新式の兵装ビルやそのシステムはここ数年の間に急ピッチで建設が進んだ代物だが、その分、国連予算をかなり使っており、そのせいか、国連議会はこれ以上予算をつぎ込むべきかという案件に頭を悩まされていた。
通常兵器がほぼ使い物にならないことが判明したとは言え、戦略上の助けにはなる。
「じゃ、日本行きは決まりですか?」
「そう…なるのかな。まぁ、私は命令を受けたわけだから行くけど、他の選出は参謀長にお任せするよ」
そのからかうような言葉に、青年が苦笑した。先程、『何か言われたか』と聞いた青年だ。
「ナギサ将補。プランは?」
そんなやり取りを見ながら、国連本部に提出された使徒戦のデータと委員会のエージェントから渡されたデータを見比べていた少年が、振り向かずにそう言った。
「とりあえず、叩ける埃は出していこう。次の使徒戦…2週間後にね」
その簡潔な言葉に、周囲にいた人間はその意を汲み取って実に楽しげに笑ったのだった。
*****
日本、第三新東京市。
次の日本首都として、と建設されているそれは、その市自体が使徒戦における武装となるべくして造られているものだった。
第三新東京市を中心としてあらゆる場所に配置されている地下シェルター。
犯罪防止などだけではなく、避難時や戦闘時の監視及び観測のためのカメラやセンサー。
そしてその最たる物は、ネルフの兵器、エヴァンゲリオンの援護などを目的として作られた、武装ビル。
これらが尽く壊されて、しかもエヴァンゲリオンの初号機は戦闘で同じく大破。零号機は実験中の暴走のため、ネルフ本部内にて特殊ベークライトで固められており、一朝一夕には取り出せない。
「…ネルフ本部は馬鹿の集まりですか?姉さん」
「仕事中は階級で呼びなさい。貴女は休暇中とは言え、ここは国連本部内よ」
ヒールの音が、廊下に響く。足音は二つ。
彼女らは紙の束を手に歩いていた。
「しかし、流石に他の仕事を部下に押し…任せるだけでも結構書類は多いわねぇ」
「本音が駄々漏れです。アンカー将補。いいじゃないですか。日本で好き勝手して良いと、あの、委員会から言われたんでしょう?ナギサ参謀長も乗り気ですし…私もムサシ…李も、楽しみな任務ではありますよ」
少女は弾む声を押さえずにそう言った。それに、苦笑することでもう一人は同意を示す。
「まぁ、監査任務が初。と言うところが不安だけれど」
「そんなの、MAGIの監視システムをお借りすれば早いですよ。姉さんが見聞きしてきたことと同じことが起こっているのなら、どうすれば誰が見えるかも分かります」
「……我が従姉妹ながら黒いわね、アンカー中佐」
その言葉に、少女はふわりと微笑んだ。
「お褒めに預かり光栄です」
やっと主役たちがまともに登場。EVAって、書くの難しいですね…。