「誕生日おめでと、フレイヤ」
「おめでとうございます、姫様！」
穏やかな昼下がり、立ち入り禁止区域でもあるアリアス離宮のサンルーム。
「ありがとう、カレン。メリアス」


紫と翠の瞳をもつ少女に、そんな言葉が捧げられていた。





「それにしても、陛下も流石よね。あんたと私の任務を全部無くしちゃうなんて」
「それだけではありませんわ、カレン様。宰相閣下まで協力して、書類の一つも回らぬようにしてくださったとか」
常ならば仕事しろよ。と思うような所業だが、今回は彼らが『自分に回らないように』するのではなく、『フレイヤとカレンの二人に回らぬように』手配したのである。
「よいものが思いつかないから、これが誕生日の贈り物だと、昨日の謁見で父上様から承りました」
シュナイゼルはシュナイゼルで、今日の為に離宮の庭を全面的に手入れしてくれたりと、今日という日を穏やかに過ごすために手を尽くしてくれてもいる。
なかなかに不器用な父とは、夕食を共にしよう。という約束だ。
「コーネリア様からは?」
「昨日のうちに、メールを頂いてるよ。あと、動きやすそうなドレス」
動きやすそうな、という色々と動き回るフレイヤを思っての服の選択は、流石というべきだろう。エリア11からはあまり離れられないらしいが、そろそろ情勢も安定してきたために総督の交代も本国では話が出ている。そうなれば、来年の今頃にはこのお茶会にもう一人加わっているはずだ。
「この紅茶は?」
「はい、オデュッセウス殿下から、『今日のお茶会にでも使ってくれ』と」
「ふふ、兄上らしい」
あまり派手好みではない第一皇子は、お茶菓子まで提供してくれている。その他、今日にいたるお膳立てもすべて、皇族を筆頭にかなりの裏への手回しが行われているようだ。
「ジノにばれてからなし崩しでの騒動で、休まる時もなかったから、静かでいいわねぇ」
「は、ははは…。カレン、確かに忙しかったけど、あれはルルーシュ達から逃げるのもあったからだよ」
「…」
確かに、あれがメインディッシュ。否、追い打ちとなっただけで、最初のはストレス解消も兼ねてかなり暴れていた記憶は…ある。
「まぁ、よいではありませんか。そういえば、ナイト・オブ・ラウンズの方々からも贈り物を頂いておりましたわ。多いといけないからと、女性方からの連名ですけれど」
「本当?」
そんな感じに穏やかに、離宮の時は過ぎて行った。



一方その頃。



「だ～！疲れる…。」
「うるせぇぞ、ジノ。お前、遠征から帰ってきたばかりだろうが。さっさとベアトリスに報告書出してこい」
「…りょ~かい。あの二人、こんな仕事量を日常にしてんのか…」
ラウンズ男性陣は、今日一日休みの二人分の仕事をこなしていた。
しかし、
「なんで、二人は休みなんだ？ルキアーノは知ってるか？陛下からの緊急の任務とか?」
「………は？」



一人、なぜ自分がこんなにも仕事に追われているのかを知らぬ人間がいたが。





久しぶりに書いたので若干違っていそうな気もしますが…。

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