赤い空があった。

赤い海があった。

翼を、今にも羽ばたかせんと広げたまま固まるオブジェがあった。

寄せては返すその波打ち際に、一組の男女の姿があった。

やがて男女の姿は消え、その赤い世界の様相は変わっていった。

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西暦2002年、京都。

セカンドインパクトにより地軸がずれて、盆地ゆえの暑さに輪をかけたようにそれが増した地では、それでも変わらぬ街並みと文化の名残があった。
 

「祇園祭か…伝統を繋いでいく。いい言葉だね」

「そうだね。受け継がれることで得られる良さがあり、受け継ぎながらも時代に合わせることにより生まれる何かがある。悪いものは教訓とする。いい心掛けさ」

街の賑わいを眼下におさめながらも語り合う二人の人物は、仲居から告げられた襖の外からの来客との知らせに微笑した。

「うまく行くかな？」

「さて、ちゃんと話し合いができるかもわからないからね。誠意を見せる以外に道はないさ」

「分かってる」

手荷物を持って外へと出ていく二人の客を見て、仲居である女性は廊下を歩きながらも首をかしげていた。

あんな幼い子供二人で旅行だなんて、親はどうしたのだろうかと。

二人が旅館の外に出ると、一人の青年が黒塗りの車の前に立っていた。否、その青年の周りには護衛と思わしき男たちも数人存在している。

「初めまして」

「初めまして、こんにちは。その車に乗り込めば良いのかい？」

少々(？)強面のSPが青年の周囲を固めていることも気にせずに頭を下げて挨拶をして来た子供に、青年は少々面食らいながらも頷く。

「初めまして…。碇家当主の秘書をしています、碇ハジメです」

うちの父にいきなり電話をかけてくると言う偉業(奇業？)を成し遂げた子供なら、これくらいには動じないかと考えながら。