2025 / 03 |
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「展開は予想通りか、フレイヤ」
「父う…、陛下。執務はどうなさいました?」
ジノが出ていったドアとは違うドア、つまり隣室の皇帝の執務室に通じるところから現れたのは、隣室のみならず世界の三分の一の主であるブリタニア皇帝だった。
「私が処理する案件はすべて処理した。問題はない」
「…………そうですか。では、どうぞお座り下さい。今お茶を淹れますから」
席を薦められ、皇帝は先程までジノが座っていた椅子に腰かけた。
「陛下の先日のあの行動の原因は…ルルーシュ達から、私を遠ざける為の布石だったのですね」
「何故、そう考える」
そう。何も知らない者ならば皇帝が仕組んだ政略結婚にしか見えない。とはいえ、ジノがフレイヤに一目惚れしたと言う事実は宮内では周知の事実だ。
「だって…そうだとしたら陛下、貴方はまず私の二十歳の誕生日に同時に発表するでしょう。その方が色々と目立ちますし。そうなれば、私に相談しなければならない事もあります。でも、せずに兄上様方と急いでお決めになった」
何らかの問いはあってもいい案なのに、それが全くなかったのはそちらも慌てていたという証拠になる。
「……では、政略結婚であるという事実はどうする」
「あら、ジノが私やカレンに親しくしてくれているとワンからお聞きになられていたのでしょう?ジノが私を見てしまったのをこれ幸いとしただけではございませんか」
「……」
沈黙で返す皇帝…否、父の姿に、フレイヤは楽しそうにころころと笑った。
「それに、政略結婚ならば父上は真っ先に母上の墓前に謝りに行くでしょう?ここ数ヵ月、黄昏の間に赴く事はあれども母上の墓に外出されたとは聞いていません」
「……」
完全に敗北である。ただ黙って紅茶を飲む父に、フレイヤは苦笑した。
この人の不器用な優しさは何から何まで分かりにくいのだが、見つけ方さえわかれば造作もない。
だからフレイヤは、父の優しさが好きだった。
「いずれ避けられなくなる事だが…今回は好きにしろ」
いずれは、ルルーシュ達に『フレイヤ』の存在も知れる。だったらさっさと済ませた方がというのが理由だったのだが……早すぎたのかもしれない。
「あちらが予測不能の動きをすればどうなるかわかりませんが…頑張ります」
にこにこと笑う姿に、皇帝は既視感を覚えた。あれは、何処か悟りきって楽しんでいる顔だ。諦めているとも言う。
「……あれに似てきたな。フレイヤ」
「あら、そうですか?」
ふふふと笑う姿に皇帝はかつて隣にいた后妃の姿を思いだし、淡く笑ったのだった。