2025 / 03 |
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ノイズが走り、声が聞こえる。そろそろ、作戦終了時間だった。
使い古した旧式の通信機の一つをつかみ、口元まで持っていく。
「…こちらポーラー、応答願う」
ノイズが数回走り、『あちら側』からの声が聞こえた。
『作戦終了だ。バカ二人は回収完了。迎えを頼む』
「了解。バカ二人の意識は?」
然り気無く酷い言い合い。
止める者がいないそれは、確実に、淡々と進んでいく。
「いつ頃戻る予定?」
『この距離なら、頑張っても二日はかかる。治療の準備は?』
「大丈夫。そっちこそカプセルに入れてきなよ」
『了解』
切れる通信。流れる沈黙。
「…了解しなかったら、いれないってこと?や、それだと死ぬからねソラン」
ソレスタル・ビーイングが登場してから変わった世界。
それは、僅かな間に一つの区切りを迎え、人類は新たに一つの組織を産み出した。
そしてそれらに対抗せんとまた、組織も生まれた。
『アロウズ』と『カタロン』。
この二つである。
大多数の人間は知らぬ影の世界で、彼らは戦いを、否、一方的な戦いを繰り広げているのである。
――――――――――地球、アイルランド某所。
「お~、いたいた、ライルの奴!あんだけ離れて暮らして、よくここまで似たなぁ」
「双子の神秘だろ、さっさとやれ」
「……わかってる!」
体格・人相・何百mも離れた場所からでも分かることすべてを、見ているカメラからモバイルパソコンに読み込む。
『大体、何であんたと組んでやらなきゃ…』
「…仕事中に私語は厳禁だよ、二人とも。それ終わったら夕飯だから早めに帰ってきてね」
喧嘩するほど仲が良い、とは到底思えない二人の言い合いに、通信のスイッチをオンにして言う。
自分の後ろで既に夕食の準備完了してくつろいでいる親友は、いつもの事だと言いながらも呆れ顔だ。
「あの距離で平然と話せるようになっただけ奇跡だ」
「まぁね~」
最初の頃は酷かった。暴れる二人(一方的に片方が突っかかって始まる)を押さえつけて(強制的)に眠らせ、病室を隔離し、まずは通信のみで話させ(約一年)、己の言いたいことを(主に片方)言い尽くさせ、脱力させたところで色々と妥協させ、現在に至るのである。
「さて、あと三時間で帰ってくるよ、シリウス」
「…暖めておく。この本を読み終わったら」
激しい最終戦争であったあの時から、四年。