2025 / 03 |
≪ 2025 / 02 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 2025 / 04 ≫ |
九年ぶりに見たかつての我が家(?)は、長い年月のせいか昔より自分には重く、そして厳かで人を寄せ付けない何かを持っていた。
「ここからはシックスのアーニャ・アールストレイムが警護を担当します。何かあれば、近くの者に」
空港から警護をしてくれたのはナイト・オブ・スリーだと名乗った青年だった。物腰や口調からしても貴族。それもかなりの大貴族だろう。対してシックスと言われたのは、ナナリーとあまり変わらない年頃の少女だ。
ルルーシュはその事実に愕然とした。同じくらいの年数を生きていても、人はやはり環境次第で真逆の道を行く事もあるのだ。
「…あの、」
「ナナリー様?」
去ろうとしたジノに話しかけた。
「何か…」
「…あの、スザクさん…セブンの方は、いらっしゃらないんですか?」
その問いにルルーシュとユーフェミアはハッとジノを見、見つめられたジノとアーニャは顔を見合わせた。ルルーシュとユーフェミアの二人にばかり注意を向けていて、ナナリーという存在を危険視してはいなかった。
「セブン…は、今任務中です」
嘘は言ってない。
「そうですか…。ありがとうございます」
ナナリーの言葉に頭を下げて、ジノはアーニャと目配せをした後、優雅に歩き去っていった。
「…よし。」
が、それはルルーシュ達の視界から自分が外れるまで。自分が視界から外れた事を確認して、ジノは走った。目的地はすぐそこ…とは言えない。はっきり言ってこの皇宮は広すぎるから、距離的に言えば500mは走った。しばらくして、目的地に到着。
「スリー!?いかがなさいました?」
「あぁ、フ…スザクはいるか?客が来た事を言おうと思ってな」
「あぁ…はい。少々お待ちください」
スザクについている騎士は、すぐにパタパタと小走りで去っていった。
ジノがフレイヤをスザクと呼んで苦笑されたのは、ナイト・オブ・セブンからナイト・オブ・スリーへの…フレイヤからジノへの言葉が広まっているからである。
曰く、『仕事中は公私をしっかり分ける為に呼び分けましょう』という事である。
一応恋人。しかも皇帝が引き合わせた、実質(裏からの策略で)結婚寸前まで行った二人である。周りからの認識は恋人というより婚約者に近い。
名前の発言は今回の為の仕込みなのだが、いきなり言われたジノはそれはもう慌てた。今でも周りに話のネタにされている。
しかし、フレイヤはこの取り決めを本気で続けるらしく、『フレイヤ・ジル・ブリタニア』の存在を公に公表する彼女の二十歳の誕生日まではこのまま。という事になった。
「別に良いと思うんだけどな…」
ジノとしては、あと少なくとも一年はスザクと呼ぶ義務が発生したのだ。
「何とかしないとっ…」
実はスザク…フレイヤは、かなり頭がいい。しかも昔はあまりなかったという行動力と思いきりと猪突猛進さが加わり、暴走されたら手がつけられないだろうと言うのはシュナイゼルの言葉だ。
「くそっ、敵わない…!」
「誰に?」
「?!」
握りこぶしを作り悶絶していたジノに、後ろから声をかけたのは当人であるフレイヤだった。
「どうかした?いきなり」
「あっ…あぁ。相談したい事があって。実は…」
暴れる心臓を宥めて、ジノはナナリーの事を話した。
全く自分は最近、この少女に振り回されてばかりだと溜め息をつきながら。