最近よく昔のバラエティー番組が深夜に再放送されているのを見る。
別世界だと断言できるそれは、他人事だと笑えるというある意味薄情な企画の数々が売りだ。





そう。あくまで他人事だと。





よく考えろジノ・ヴァインベルグ。ナイト・オブ・スリーまで上り詰めたその力は飾りか。
「…申し訳ありませんが皇帝陛下。もう一度」
言ってはいただけませんでしょうか。そう言おうとした時だった。
何やら後ろの扉から鈍い音が聞こえてきたのである。
「…？」
誰もが一体何事かと扉を見る。
しばらくして音が止むと、二人がかりで開けるような今時にはない重っ苦しい扉が開けられた。
「…え」
「父上様。これは一体どういう事なのです？」
現れたのは、五日前に見た紫と碧の瞳の少女だった。




















しかし、ジノが驚いたのは少女の出現のみではない。どう見ても、少女が某重っ苦しい扉を『一人』で開けたからだ。
ちなみに少女を追って二人の人物も入室した。カレンと、もう一人は腕利きで古株の女官だ。
「姫様！陛下に……」
「当人に何のアクションもなしに勝手に話を進める方に会いに来ただけです。『父上様』？私、何も聞いておりませんのよ。私ごときにでも納得のいく説明をしていただけませんか？」
簡素なドレス。皇帝を前にするというのに、何一つ飾らぬ髪。しかしそこに立つ姿は誰よりも毅然とし気高く、また恐ろしいほど美しかった。
「紫と碧の瞳…？」
初老の男性が呟くと、皆ざわめきあい口々に言い始める。
「母君の後を追われるようにお亡くなりになられたと聞いたが…」
「いや、私は陛下が日本…エリア１１の愚か者どもから隠したと…」
「母君の…アヤコ様の敵を取りに乗り込んだとも聞いたが」
「生きて…無事に本国におられたのか」
「待て。あれはまず本物か？」
「偽者にあのような度胸がありますか。見なさい。あの瞳の爛々と輝いておられること…まこと美しい」
「姫様とたばかってブリタニアを滅ぼさんと」
「メリアスが姫様と呼んだのだ。あれは姫様の誕生前よりアヤコ皇妃にお仕えしていた。間違えるわけがない」
周りがそう言い合う中で、話についていけないジノは茫然とし、カレンとメリアスはオロオロとしていた。
「……………まずはあらぬ嫌疑をかけられる前に名を名乗り前へいでよ。すべてはそれからだ」
皇帝のその言葉に、あくまで笑顔で少女は返す。
「それは、今まで実力でやって来た私に新たな嫌疑と努力を水泡と帰せという事を言っておいでで？」
「そうは言っておらぬ」
その後しばらく無言の攻防が続いたが、少女が深く長く息を吐き出し、膝を折った。
「皇帝陛下におかれましてはご機嫌麗しく、皆様におかれましてはご健勝の事とお慶び申しあげます」
まるで音楽のように紡がれる声は美しく、繊細なハープの音色のようだった。
「お久しぶりと申し上げましょうか。このフレイヤ・ジル・ブリタニア。一年前に本国へと帰還しておりました。皆様にご挨拶する機会がなかった事をお許しいただきたい」

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