少し久しぶりですが、連載の続きをUP。
さて、そんなわけで。
「……」
「…何よ」
「いや…」
「似合うでしょう?カレン」
ジノは固まっていた。
酒に酔ったわけではない。頭を打ったわけでもない。しかし、自分の目の前には未知の現象が広がっている。
「こんなカッコ久しぶりなんだけど…髪下ろすのも一年ぶりくらいかな」
「昔は学園でよく見てたけどね~カレン、バンダナも何もかもしまって、髪を下ろすのもやめちゃうんだもん」
フレイヤがにこにこと笑いながらカレンの腕に抱きつく。かなり上機嫌だ。
………あれ、酒に弱くはなかった…よな。
「あれは、あんたを守る為に他は全部邪魔だったからよ。そりゃ大切だったけど…本当に大事なものを守る為なら、お兄ちゃんだって笑って許してくれるわ」
「……カレン…」
見つめあっている。手を取り合い、お互い至近距離で見つめあっている。
「………」
「あ~ダメだな。完全に二人の世界に入ってやがる。おいジノ、こっちで飲もうぜ」
「えっ?お、おぅ」
二人の世界。
それはまさしくお互いしか見えていない世界だ。
女性二人が見つめあって二人の世界というのも変な話だが、着飾っているからか、あの二人だからか、違和感のないところがまた変だ。
「あいつらは本当に仲がいいな」
「ワンからお聞きしましたが、カレンはフレイヤの騎士なんだそうですよ。二人はブリタニア本国に渡って来た時からあのような感じでしたから、騎士の誓いをしたのはエリア11でなんでしょう」
「……えっ!?」
トゥエルブからのその言葉に、ジノはしばらく言葉が出なかった。
カレンがフレイヤの騎士?!
思わず二人の方を振り返るが、二人はノネットと談笑している。
「知らなかったんだけど……」
「私も先日、ワンからお聞きしましたから。叙任式はフレイヤが正式にメディアの前に姿を表す直前にやると」
そしてそれと同時に、カレンはナイト・オブ・ラウンズから抜けるのだという。しかしフレイヤはラウンズに居続けるので、あまり変わらないと言えば変わらない。
「つまり!スザクがフレイヤに戻っても、カレンが小姑のようにいるっつ~こったな」
しかもお前、正式に婚約者になった訳じゃないし?
レオギスの容赦ない言葉に、ジノは撃沈した。
そうだ。色々とあって忘れていたが、自分達は成り行きで婚約者にさせられそうになってその結果周りから恋人に認定されてしまい、ついでにそれを利用するかのように呼び名の事を広めて今回の事をしのぐ事になったのだ。
周りが色々先走るどころか独走しているだけで、自分達は一切何もないのである。
「テン…あまり虐めると可哀想ですよ?」
「そういうお前も笑ってるじゃねぇか。ま!陛下と閣下がお前を選んだんだ。精々頑張ってあの天然鈍感のあいつを落とせ!」
もう酔いがまわっているのか、かなり豪快にレオギスはジノの背を叩いている。激励の意味もあるのだろうが、痛い。
しかし、それがいきなり止まった。
ふと後ろを見ると、レオギスはニヤリと笑って腕を首に回してきた。
「おいっ!苦し……」
「そうなると、ルルーシュ元殿下のみならず、今来てる客の誰かにスザクが女だって知られれば危ないわけだな。ルルーシュ元殿下もナナリー殿下もユーフェミア元殿下も『スザク』が好きだったらしいからな~」
「……え゛」
「ルルーシュ元殿下はなかなかの切れ者らしいぜ?皇族の地位がなくても上に来るかもな。危ないんじゃねぇの?」
そう言って離れたレオギスに、ジノはすぐに詰め寄った。
「フレイヤと彼らは義姉弟だろ!そんなわけ…!」
「お前、護衛で一緒だったんだろ?どう思ったんだよ」
「どうっ…て…」
「何騒いでんのかしら、あの二人」
「いんじゃないの。集まってバカやれんのもそうそうないんだし」
ノネットは豪快にウイスキーを煽りながら、パクパクとつまみを食べていく。
未成年だからと一応飲酒はしていないが、来年には無理にでも飲まされるだろう。
ふと目を向けると、フレイヤがにこにことジンを呑んでいた。先程までジノと騒いでいたはずのレオギスと呑み比べをしているようだ。
「…呑みすぎなきゃいいけど」