「……大丈夫ですか」
『生憎、そちらが気になってあまり寝ていない。見たところまだ大丈夫そうだが…』
「…えぇ、まぁ。お…私もカレンも無事です」
「やつれてますよ?コーネリア殿下……」
色々一段落して自室に逃げ込んだスザクは、カレンと共にエリア11にいるコーネリアに通信をしていた。
すると驚いた事に、コーネリアはやつれたような、疲れきった顔をしていたのである。
……十中八九、心労だろう。
『三人が病院に移るのは…』
「こっちの時間で…明日くらいだったっけ?」
カレンからの問いにスザクは頷き、苦笑しながら画面越しのコーネリアを見た。後ろのギルフォードの…気遣わしげな顔が見える。
「…姉上様は何も心配なさらないでください。大丈夫ですよ。これも一重に私達を国外任務に出してくださらなかった兄上様の責。見つからない自信もありますし、何より会う気がありませんから」
今会えば、絶対にエリア11へと連れ帰るなど言い出すに違いないだろう。ゼロであったルルーシュにカレンが見つかるのは論外。
誰が好き好んで、己を道具とした国に居続けたいと思うのか。
『…そうか』
カレンはエリア11が嫌いなわけではないから、今でもちょくちょく任務帰りなどによっている。
しかし自分にとってあの場所は、大好きだった叔父のいた場所であり母が生まれ育った場所である以外の価値はない。
あそこは、自分にとっての故郷などではないのだから。
「……フレイヤ」
「っ!だ、ですから姉上も、お休みになってくださいませ。責務に支障をきたしてしまいますし、何より姉上。姉上のそのような姿を見ていると、私は…」
咄嗟に目に涙をためながらそう言うと、コーネリアはそれに感激した。それにカレンは嘆息した。
相変わらず素晴らしいというか何というか、物凄い演技力である。
『フレイヤ…分かった。しっかりと休もう。来月か…その辺りに一度戻る事となった。その時また会おう。二人とも』
「はい」
「お待ちしています」
微笑したコーネリアの姿が画面から消えると、二人はソファの背もたれにグッと背中を預けた。
「………疲れた……」
「あの騎士の睨み怖いわよ…」
そう。二人が疲れたのはコーネリアとの会話にではない。
コーネリアの後ろに控えていたギルフォードの睨み…否、気遣わしげな顔である。
「大体連絡してくれって言ってきたのはあいつなんでしょ?」
「……うん。あの人姉上様至上主義だから…」
通信の予定は全くなかった。こちらが大変だろうとコーネリアが気遣った故である。
「…普通こっちに先に聞くものなんだけどなぁ…」
「だから、あの姉上様至上主義者には無理だって。ダールトン卿も今本国に帰っていていないしさ…」
それなのにギルフォードが、心配で心配でやつれてきた主を見て、こちらへと通信を繋げたのである。
そこはいい。主思いの騎士の鏡よと褒め称えるだろう。
問題は、先にコーネリアに『本国のフレイヤ様と騎士のカレンから通信が入っています』と伝えたことだ。
後から伝えられ、しかもギリギリとあっては慌てる以外に何もできない。しかも予想以上にコーネリアがやつれていたので更に慌ててしまった。
「……はぁ」
あと一日。さて、こういう時は必ず何か起きるのだ。
何も起こらなければいいと、天を仰ぐスザクだった。